【読書記録】傲慢と善良 辻村深月

辻村深月

2024年に映画化された恋愛ミステリー『傲慢と善良』。

Instagramで面白いと評判になっているのを見て、ずっと読んでみたかった本です。

婚活をして結婚を目前にしている男女が主人公なので、
20~30代の結婚を考える世代にとっては、とても刺さる内容なのではと思います。

感情の機微も丁寧に描かれているので、
実際に自分が登場人物になっているような感覚を味わえました。

自分の内面を見つめなおすきっかけをくれる、そんな本です。

本の概要

著者 辻村深月
ジャンル 恋愛小説

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

傲慢と善良 [ 辻村深月 ]
価格:1,760円(税込、送料無料) (2025/11/7時点)


あらすじ

婚活で出会った架(かける)と真実(まみ)。
真実が突然、姿を消してしまう場面から物語が始まります。

前半は架サイドで話が進みます。
失踪した真実を探すため、真実の地元の赴き、これまでの真実の人生を知り、思いを馳せます。

後半は真実の視点から。
架との結婚を心待ちにしていた中で起きたとある出来後をきっかけに、これまでの人生、家族関係、架との結婚、これからのことを見つめなおすことになります。

『善良』な人として生きてきた一方で、気付かぬところで『傲慢』になっていることに気づきをくれる一冊です。

こんな人におすすめ

✓ 婚活中の人
✓ 婚活や就活などで自己分析をしている人
✓ 大人の恋愛小説を読みたい人

読む前の印象

恋愛ミステリーと聞いていたので、どこかドロドロして怖い部分があるのかと内心ひやひやしていました。汚い言葉やグロい表現は苦手なので。
婚約者が失踪するなんて、何かよからぬことしか思いつかないし、と思っていましたが、実際はそんなことなかったです。
婚約者の二人が、ただただ、自分のこと、相手のことを、考えて、考え抜いて、どうしたらいいのかもがいている、純愛物語でした。

感想

控えめで真面目な真実の本心には、衝撃を受けました。
誰にでも、表と裏の顔があると思いますが、
「いくらなんでも、そこまで思う?」と、読んでいて思わず眉をひそめてしまうほど、ギャップを感じました。
狭い世界で育った影響なのか、どこか自分を正当化する傾向があり、
“善良”な顔の裏にある“傲慢”さを、まざまざと見せつけられた気がしました。

そして何より印象に残ったのは、真実の母・陽子の存在です。
彼女の言動には、同じ母親として思わず仰天してしまう場面がいくつもありました。
30歳を過ぎた娘をなおも束縛しようとする姿には驚きましたが、
真実がこれまでずっと従順に母の言葉に従ってきたことを思うと、
お互いに「親離れ・子離れ」ができないままの関係だったのだと感じます。

わたしも母として、子どもを思う気持ちは理解できるからこそ、ゾッとしました。
「もし自分も一歩間違えたら、将来、陽子のように我が子を縛ってしまうかもしれない」
そう思うと、他人事とは思えませんでした。
『反面教師』にして覚えておきたいと思います。

物語の前半、架の視点で展開されるパートは、真実の行方を追いながらも
手がかりが少なく、少し間延びした印象を受けるかもしれません。
自己内省が物語の核とはいえ、「新たな事実の発覚」までの道のりが長く、
架の思考の迷路に付き合うのが少し疲れてしまう方もいる、と思いました。

登場人物それぞれの“善良”さの中に潜む“傲慢”を丁寧に描いたこの物語。
読んでいくうちに、自分の中にも善良さと傲慢さがあることに気づかされると思います。
長く心に余韻を残す一冊でした。

タイトルとURLをコピーしました