町田そのこさんの作品が好きで、特に事前情報なしで読み始めた『ぎょらん』。
裏表紙のあらすじを見ると、「人の死」がテーマとのことで、
怖い内容(グロい内容)が苦手なわたしは、
「やっぱり読むのをやめようかな」と一瞬ひるんだものの、
町田さんの作品ならきっと大丈夫だろう!と信じて読みました。
結果・・・

信じて正解でした!笑
「人の死」がテーマであるけれど、前向きな気持ちにさせてくれる本。
色々な人の死をめぐり、残された人の気持ちが丁寧に描かれていました。
本の概要
著者 町田そのこ
ジャンル ヒューマンドラマ
読後感 ほっこり、すっきり、感動
あらすじ
人が死ぬ瞬間に生み出す珠、「ぎょらん」。それを噛み潰すと、死者の最期の願いが見えるという――。十数年前の雑誌に一度だけ載った幻の漫画、『ぎょらん』。そして、ある地方の葬儀会社で交錯する「ぎょらん」を知る者たちの生。果たしてそれは実在するのか? R-18文学賞大賞受賞の新鋭が描く、妖しくも切ない連作奇譚。
新潮社HPより引用
友人の死をきっかけにニートになった青年・朱鷺(とき)を中心に物語は進みます。
朱鷺は、「ぎょらん」という人が死ぬ直前に残す赤い珠の存在を調べ続けていました。
死んだ人の想いを詰め込んだ珠なのだそうです。
その「ぎょらん」という都市伝説のような存在を、朱鷺やその周囲の人々がどのように受け止め、
直面した人の死に対して向き合うのか、を描いています。
生と死について考えさせられる、涙なしでは読めない感動作です。
こんな人におすすめ
✓ 感動する作品を読みたい
✓ 心温まる、ほっこりする話を読みたい
✓ ちょっとしたファンタジーがすき
✓ 町田そのこさん作品がすき
「ぎょらん」という実際には存在しない(とわたしは思っている)ものが題材になっているので、
そのあたりが受け入れられる人は面白いと思います。
現実世界が舞台だけど、不思議なものが登場する「ちょっとしたファンタジー」が好みな人は、面白いと感じるのではないでしょうか。
あとは、やはり町田そのこさんのワードセンスが所々光っているので、生死がテーマの本作でも、そこまで重たい感触はなく、ライトに小説を読みたい人にはぴったりです。
読む前の印象
生死がテーマということで、読む前はそれなりに覚悟していました。
グロかったり、死んでしまうシーンがあったりするのかなと構えていましたが、そんなことはなく。
あとは、「ぎょらん」っていったい何?というのが一番思っていたことでした。
感想
やっぱり町田さん作品の登場人物は良いですね。
基本、温かい人たちで安心できる。
会話のテンポが軽やかで、笑顔になれる。
クスっと笑えるワードセンスが好み。
「生と死」という比較的重ためのテーマなのに、ライトに読めてしまう作品。
特にわたしが印象に残ったのは、最後の章、朱鷺の母親。
子どもを信じる気持ちを、最後の最後まで、持ち続けているところ。
わたしも同じ母親ですが、
こんなに広い心で子どもに接することができるか?
信じてあげることができるか?
と何度も自分に問いました。
子ども(朱鷺)のことを最後まで信じて待ち続けた姿はとても素晴らしいものでした。
もちろん、泣きました。
小説の登場人物と自分が同じ立ち位置だと、つい感情移入しやすくなりますね。
わたしの場合は、「母」という立場に、ついつい自分を重ねてしまいます。
子どもを思う気持ち、というものに心が揺さぶられやすいみたいです。
それだけ、自分の中で、「母親」という立場を大切にしているのかなと感じました。
もちろん、母子の関係性だけでなく、職場の人間関係、夫婦関係、友人関係など、
様々な関係性の登場人物がこの作品には出てきます。
気持ちを温かく揺らしてくれる登場人物が、誰にとってもある物語なのではないかなと思っています。

