坂本葵さんの『その本はまだルリユールされていない』を読みました。
挫折があっても大丈夫、と優しく寄り添ってくれるようなメッセージを感じました。
この本は、製本工房が舞台です。読書は好きだけど、製本のことについて考えたことがなかったので、いろんな製本方法をはじめ、工房の様子など、新しい世界を知ることができました。

主人公は製本工房の隣のアパートに住んでいます。羨ましい環境だなあ~
あらすじ
司法書士になる夢を諦めたまふみ。司書として働くために引っ越してきたアパートの隣には、製本工房がありました。そこの工房で、製本という本を製作する過程に初めて出会います。
優しく明るく製本について教えてくれる綺堂瀧子親方、その孫の由良子、お隣の釣り堀店主、書店カフェの店主と店員など、出会う人々と製本を通じて、それぞれの人の物語に触れ、まふみ自身も前を向いて歩んでいきます。
レビュー
おすすめ度 ★★★★★(5/5)

失敗や挫折があっても、優しく寄り添ってくれる一冊。
主人公のまふみは9年間目指してきた司法書士試験の合格をあきらめ、新たな道へ進もうとしますが、なかなか9年と言う長い年月努力し続けた事実を吹っ切ることができないでいます。
だれでも「頑張ったけど上手くいかなかった」という経験はあるのではないでしょうか。
そして、後悔したり未練があったり。そんな感情を否定することなく、それでいい。と包み込んでくれるようなメッセージを感じました。
製本工房でのお話なので、製本工房の様子や製本方法、そして、各登場人物のお気に入りの本など、本にまつわるお話がたくさん出てきます。
本好きなら、きっとワクワクしながら読める物語だと思います。
感想
まふみが9年間目指してきた司法書士試験合格を諦めた、という設定がわたしにとって、とても響きました。というのも、わたしも学生時代、ある教科を一生懸命勉強して、試験にも真面目に取り組んでいたのですが、今現在はすっかりその分野から離れて生活しているからです。
まふみのように、あまりにも長い時間を費やしたのに、今現在その分野に関わっていないというのは、あの時間が無駄だったのではないのではないか、という重いにふと襲われる時があります。
物語の中では、まふみはボロボロに使い倒したポケット六法全書を製本し直していました。
泣きながら。
これまでのひたむきに努力し続けた9年間の日々が押し寄せてきたんでしょうね。
胸がいっぱいになりました。
この本は、過去の自分が頑張ったこととは別の道へ進んでも、それでも大丈夫。という優しいメッセージが込められるように思います。まふみも、自分の人生をしっかり歩んでいこうと、前を向きます。
ありのままを認めてくれて、優しく包んでくれるそんな物語でした。


